月次数量、月次金額、お客様ごとの一覧。 書いている数字は、どれも同じものでした。
同じことを、何度もしていた
デザインを担当していた会社が閉鎖になり、工場関係の会社に転職しました。
最初に就いたのは、営業事務の仕事でしたが、そこでいちばんつらかったのは、同じことを何回もすること。
月次数量、月次金額、お客様ごとの一覧。
提出部署ごとに様式が決まっていて、私はそこに数字を入れていきます。
でも、実はコレ、元の数字はどれも同じなんです。
生産管理宛には数量、営業会議には金額、全体会議で使うサマリー、どこに焦点を当てているのかの違いです。
ひとつの情報を、形の違う器に何度も移し替えていく。移し替えるたびに、写し間違いが起きないように見比べる。合っていることを確認するために、また見比べる。
その作業に意味がないとは言いません。それぞれの部署の都合があり、様式にはそれぞれ理由があります。
ただ、当時の私はどうしても不毛な作業に思えてしまって…それが苦しかったんだと思います。
自分の手元だけは、なんとかした
当時の私も、Excelの簡単な関数くらいは使えたので、できる範囲で効率化しようとしました。
でも、そこで壁に当たります。
いちばん最初に入力する数字は、お客様から聞いたものです。そこは自分で考えて作る部分でした。
でもそこから先、その数字は各部署の様式に姿を変えて出ていきます。
つまり出口が自分の手の中にないんです。
大きい会社ですから、提出書類はさまざまな部署で使われ、それぞれが関わっています。
私ひとりが騒いだところで何の解決にもなりません。
仕組みとして直さないと意味がないと提案してみたこともあります。
こうすれば全体が楽になるんじゃないか、と。
けれど、相手にされませんでした。
いま思えば、当然だったとも思います。私は中途採用の事務職で、提案の中身を説明する言葉も持っていませんでした。何がどう楽になるのか、いくら時間が減るのか、そういう話ができていなかった。
結局、自分の手持ちの範囲だけに関数を入れて、自分が少しだけ楽になる形を作って、それで終わりました。
それでも限界がありました。
前の人が作った、巨大な関数
もうひとつ、当時ずっと引っかかっていたものがあります。
客先毎の受注台帳ファイルです。
別の人が作ったもので、関数があちこちに組み合わされた、巨大なファイル。よくできていたんだと思います。
作った人はきっとExcelが相当得意な人だったんでしょう。
でも、人によって作り方の癖があります。どこからどこを参照して、どういう順番で計算されているのか、読み解いているだけで時間が過ぎていく。普段の仕事をしながらじっくり解読する時間なんて、どこにもありません。
だから触れない。触れないから、おかしくなっても直せない。
これは当時の私の話ですが、実はいま、お客様から同じ話を聞きます。
「前に作ってくれた人が退職してしまって、誰も直せないんです」
Excelが得意な人が、善意で、よくできたものを作る。その人がいる間は回ります。でもその人がいなくなった瞬間に、それは誰も触れないブラックボックスになる。
私が「属人化させない形で作る」ことにこだわるのは、たぶんここが原点です。
もちろん100%事務員さんがメンテできるとは言い切れませんが「何にもしてないのにおかしくなった!」と、あるあるフレーズを聞かないような作りを心掛けるようになりました。
あのとき欲しかったものを、いま作っている
いま私がしている仕事のひとつに「日次や月次など集計を楽にする自動化システム構築」があります。
集計をボタンひとつにする。入力を1か所に集める。人が見るべき数字だけが自動で届くようにする。
それは結局、あのとき自分が欲しかったものなんだと思います。
そしてもうひとつ、あのとき自分にできなかったことも、いまは仕事にしています。
「こうすれば楽になる」と提案しても相手にされなかったあの経験は、たぶん無駄ではありませんでした。
社内の人が言っても通らない話が、外から来た人が数字を添えて説明すると通る、ということが実際にあります。
現場の事務員さんが「これ、なんとかならないですか」と思っていることは、たいてい正しいんです。
ただ、それを通す言葉と立場がないだけで。
だから私は、システムを作り始めるとき、いちばん手を動かしている人の話を聞かせてもらうようにしています。
決裁するのは経営者や工場長の方ですが、どこが本当に苦しいかを知っているのは、毎日その作業をしている人です。あのとき誰にも聞いてもらえなかった私が、いまはそれを聞く側にいます。
もしあの頃の私に会ったら「それ、私が楽にしてあげるよ」と言ってあげたいなと思って仕事をしています。
次回は、営業に出るようになって、いろんな会社の会社案内を見ながら思っていたことを書きます。


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