打ち合わせの内容を、うまく上司に説明できませんでした。
手元には、もらってきた会社案内もあるのに…
うまく説明できなかった、駆け出しの頃
営業事務から、だんだん営業として外に出るようになった頃の話です。
私が勤務していた部署は「電子部品用の部品」を扱っており、完成した製品を売るのではなく、持っている技術をお客さまの部品に採用してもらうお仕事でした。
ですから、飛び込みや訪問営業のようなことはなく、既存のお客さまとの付き合いがほとんど。
営業デビュー後2~3社は上司が付いてきてくれましたが、そこからは早くも独り立ちせねばなりません。
帰社後は、今日はどんな内容で今後の受注見通しはどうなのかを上司に報告します。
これが、うまくできませんでした。
聞いたことは覚えているしメモしたつもりなのに、いざ人に説明しようとすると聞いた話の断片だけを並べてしまう。
そして教育の意味を込めてなのでしょうが、矢継ぎ早の質問が飛んでくる…答えられない…
今になればなぜこれができなかったのか、よくわかります
- そもそも顧客の完成部品を見たことがない
- 顧客はどんな技術を持っていて、どんな分野に活かされているのか知らない
- どんな設備を使っているのか知らない
そう、私はお客さまのことを何も知らなかったのです。
知っているのは自分が担当して納めている部品の仕様だけ。
そこで私は思いつきました!!
「まずお客さまの会社案内をもらって、お客さまのことを知ろう。そうすれば背景も含め自信をもって受注動向の報告もできるに違いない。」
既存顧客の会社案内を欲しがる私を不思議そうな目でみる先方の担当者もいましたが、中には「あ、ウチ特にそういうのないんだよね」と言われたことも。
いただいた会社案内を無敵の武器でも手に入れたような気持ちで開いた私の前にあったのは…立派な言葉たちが載ったパンフレットでした。私たちは何を大切にしているか。社会にどう貢献していくか。未来へ向けて、ともに。
私が知りたかったことは書いてありませんでした。
何を作っている会社なのか。どの工程を自社でやっていて、どこは外に出しているのか。得意なのは小ロットなのか量産なのか。設備は何があるのか。
打ち合わせで聞いた話とつながる手がかりが、どこにもない。だから報告の助けにならない。
今のようにどの会社にも立派なウェブサイトがある時代ではなかったため「みんな情報はどこから得てるんだろう…」と解消のしようがない無力さに落ち込む日もありました。
デザインの目で見ると、もっと気になった
私はもともとデザインの仕事をしていたので、いただいた印刷物はつい、作りのほうも見てしまいます。
そうすると、目につくものがありました。
斬新なんだけど、何を言っているのか分からない会社案内です。
写真が大きく使われていて、余白がきれいに取られていて、色の組み合わせも考えられている。
見た瞬間に「お金をかけて作ったんだな」と分かるものもありました。
作った側は間違いなく一生懸命やっているんです。きれいなものを作ろうとして、そのとおりに作れている。
ただ、受け取った私の望んでいた情報は得られなかった。
いま思えば、あの奇策は無駄ではありませんでした。
『会社案内とは何のためにあるのか』を考えはじめたのは、このときです。
誰のために作るのかが、ずれている
たくさんの会社を訪問して、たくさんの会社案内をいただくうちに、思うようになりました。
もっと、相手に生きるものを作ればいいのに。
会社案内は、渡した瞬間に役目が終わるものではありません。
むしろ、渡したあとから働きはじめるものです。
受け取った人は、それを持って自分の会社に帰ります。
そして、上司や同僚に説明します。あの会社はこういうところです、と。
そのときに手元にあるのがその一冊です。
だから会社案内に本当に必要なのは、受け取った人が社内で説明するときに使えるかという一点だと思っています。
作った会社が言いたいことを並べるのではなく、受け取った人が説明に困らない順番と中身になっているか。
あの頃の私が欲しかったのは、まさにそれでした。
今の提案に活きていること
いま、私は会社案内や製品カタログを作るお仕事をいただきます。
そのときによくお伝えするのは、1冊にまとめないほうがいいことがあります、ということです。
会社そのものを知ってもらうためのものと、具体的に何ができるか(売るか)を伝えるためのもの。
この2つは、読む人も読む場面も違います。
分けたほうが、それぞれの役目がはっきりします。作るほうも、どちらに何を書くかで迷わなくなります。
お客さまの中には「2種作る=コストがかかる」に難色を示す方もいらっしゃいます。
ですが、瞬間的なイニシャルコストがかかったとしても、社員の代わりに営業してくれるツールと捉えれば活きた経費の使い方にできるはずです。
私がこの提案をするのは、デザインの理屈からではありません。
会社案内をもらう側にいたことがあるからです。
鞄の中に何冊も入れて持ち帰って、そのうちの何冊が役に立ったかを知っています。
それを今の私のお客さまに還元していきたいのです。
次回は、「美大も出てないのね」と言われた話を書きます。


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